手紙


今日、○月×日はポポとナナが初めて出会った、とても特別な日だ。この日は二人にとっては誕生日と同等かそれ以上に大事な日であり、毎年お祝いをしようと二人で約束していた。
ポポ(ナナちゃん、喜んでくれるかな……)
ポポは右手に今持っているケーキに視線を落とした。今は一秒でも早く、彼女に会いたかった。

(ナナちゃん、一人で寂しがってないかな……)

(今日は、どんなことを話そうかな……)

(このケーキ、初めて食べるけどおいしいかな……)

いろいろなことを考えて歩いていたら、いつの間にか自宅の前についていた。ポポは玄関の前でポッケの中から鍵を探ると、できるだけいつもとおんなじような感じでドアを開けた。
ポポ「ただいまあ!」
ナナ「あ、お帰り」
お 皿を洗っていたナナが、手を止めてポポの元に駆け寄ってきた。いつもと変わらない、ごく自然な受け答えだった。ナナはポポのニコニコ顔を、きょとんとした 顔で見つめていた。そんなにだらしない顔になってるかな、とポポは一度空いているほうの手で顔を軽くたたいて引き締めた。
ナナ「どうしたの?」
ポポ「あの、ナナちゃん、ほら、お土産にケーキ買ってきたよお」
ナナ「え?あ、ありがとう…それは?」
ポポ「こっちはねえ、手袋!ナナちゃん欲しがってたでしょ?」
ナナ「え?いいの…?」
ポポ「うん、受け取って、僕からの気持ちだよ、ほら」
ナナ「ありがと…でもなんでいきなり?」
少し戸惑ったようにお土産を受け取ったナナに、ポポは笑いかけた。彼女も珍らしい冗談を言うものだなあ、と思った。
ポポ「やだなあ、ナナちゃん、君からもなんかあるんでしょ?」
ナナ「えっ……?」
ポポ「いやだなあ、今日はお祝いの日じゃない、とぼけちゃってえ、さ、早くう」
ナナ「…………」
ポポがそう言っても、ナナは戸惑った表情のままだった。ポポの心の中に小さな不安が芽生えた。
ポポ「も、もしかして…ホントに今日が何の日だか分かってないの?」
ナナ「う、うん、ごめん……」
おどおどとナナは答えた。ポポは一瞬ショックで一瞬頭が真っ白になった。立ちくらみを抑えて、もう一度聞き返す。
ポポ「そ、そんな……冗談、だよね……」
ナナ「…………」
ナナの目は泳いでいた。必死に思い出そうとしているその様を見て、ポポはさっきまでの高揚した気分はどこへやら、悔しくて泣きそうになった。絶対覚えてくれていると思ったのに……
ナナ「あの……」
ポポ「そっか……覚えてないんだ……」
ナナ「ごめんなさい、今日、なんの日だったっけ?」
ポポ「今日は僕たちが産まれて初めて出会った日じゃん…………」
自分でも声が震えているのがわかった。こらえきれずに、涙がぽろぽろとこぼれた。ナナははっとした様に口元を押さえていた。だが、もう遅い。信じていたのに……信じていたのに…

ポポ「毎年必ずお祝いしようねって約束したのに…去年の今日も、指切りげんまんしたのに……ひどいや……」
ナナ「あ、あの……」
ポポ「うっ……ううっ……ふえぇん……うわあああん!」
ナナ「ごめんなさい、あの……」
いいわけめいたことを口走るナナが、ポポの手を取った。ポポは力任せにその手を払った。押されたナナは尻もちをついた。
ナナ「あっ……」
ポポ「ナナちゃんのばかあ!嘘つき!嘘つき!!わああああん!」
ナナ「あ、ま、待って……!」
ポポ「わああああん!!!」
ポポは玄関を力任せに閉めると、真っ白になった頭でひたすらに走り始めた。どこへ行くのか、自分でもわからなかった。



ゼルダ「もしも〜し、いないの〜?ポポく〜ん?ナナちゃ〜ん?」
喧嘩のことなど知る由もないゼルダは、ポポたちの家の玄関の前で暢気にドアをこんこんとノックしていた。どうにもこうにも暇なので、一緒にどこかに行かないかと誘いに来たのだが、いくら呼んでも返事がない。
ゼルダ(せっかく遊びに来たのに、二人とも居ないなんて、運がないわねえ……)
あきらめてゼルダが帰ろうとドアに背を向けたそのとき、家の中でカタンと音がした。やっぱり誰か居るのかしら、と思ったゼルダは、ためしにドアのノブに手をかけて、ゆっくりとまわした。鍵はかかっていなかった。
ゼルダ「あら、鍵が……」
もしかしたら泥棒とかがいるかも……ゼルダは身構えながらドアを開けた。




泥棒はいなかった。が、そのかわりに部屋の隅っこで体育座りで震えているナナがいた。体の具合でも悪いのかな、と心配になったゼルダは声をかけようとしたが、それにしてはどうにも様子がおかしかった。ゼルダは彼女のひざの辺りがぐしょぐしょにぬれているのに気づいた。
ゼルダ(ひょっとして、泣いているのかな……?)
ゼルダ「どうしたの、そんな隅っこで?」
ナナ「ううっ……うぇえん……ああっ……」
ゼルダの優しい声に、ナナは顔を上げた。その顔はやっぱり涙でくしゃくしゃだった。
ゼルダ「ちょっと……どうしたの?だいじょうぶ?」
ナナ「ううっ……ぜ、ゼルダさん、どうしよう……ポポ君が……出ていっちゃったよぉ……」
ゼルダ「出ていっちゃった?どういう事?喧嘩でもしちゃったのかしら?」
ナナ「違うの…、私が、約束を破ったから……」
ゼルダ「約束?」
ナナ「そうなの、私が、あの、忘れてたから……」
イマイチ彼女の話は要点がわからない。わからないが、彼女は動転しているのだろうということはわかる。ゼルダはなるべく優しく、先を促した。
ゼルダ「忘れてた?何を忘れてたのかしら?」
ナナ「うん、あの……その……ぐすっ……うえぇん……」
ゼルダ「ほらほら、落ち着いてゆっくり話してごらんなさい」
ナナ「う、……うん……あのね……」






ゼルダ「そっかあ、それはポポ君が怒るのも無理ないわねえ…」
ゼルダはポポのナナに対する気持ちをそれなりに良く知っている。それを考えると、軽々しくあなたは悪くないわよ、とは言えなかった。
ナナ「どうしよう……もうポポ君と一緒に遊べなくなっちゃう……ポポ君が居なくなっちゃうよ……そんなのやだ……やだよぉ……うああぁんっ!」
ゼルダ「大丈夫よ、ちゃんとポポ君の目を見てごめんなさいすればきっと許してくれるから、ね?だからもう、泣くのはやめなさい」
ナナ「で、でも、謝っても許してくれなかったら……」
ゼルダ「そうねえ……もしダメだったらおもいっきり目の前で泣いちゃえばいいのよ…そうすれば大抵の男はコロリよ」
ナナ「そ、そうかなあ……?」
ナナが潤んだ目を袖口でこすった。いまだに頭の中がこんがらがっているようだったが、心なしか先ほどよりも落ち着いたようにも見えた。ゼルダは励ますように、力強く言った。
ゼルダ「そうよ、どっかの国の総理大臣だって涙は女の武器だって言ってたでしょ?だったら、使わなきゃ」
ナナ「よくわかんないけど…………ポポ君、戻ってきてくれるかなぁ?」
ゼルダ「大丈夫、あなたがちゃんと謝れば笑って許してくれるはずよ」
ナナ「よかった……ポポ君、戻ってきてくれるんだ……」
ゼルダ「さあ、どうやって謝ったらポポ君がどうしたら笑って許してくれるか考えましょ……あなたはどうしたらポポ君が喜ぶと思う?」
ナナ「うんと…」




ポポは見知らぬ公園のベンチでぼろぼろと泣いていた。ここまでどうやってきたかも、どのくらいの間泣いていたのかも憶え ていない。それほどポポの受けたショックは大きかった。僕は、彼女を愛していたのに……僕にとって彼女は全てだったの彼女にとって自分の存在というものは その程度のものだったのか。去年のあの約束はなんだったのか。ポポの思考は無闇に空転するばかりだった。
ポポ「ううっ……酷いよ…信じてたのに……」
気がつくと手袋がこれ以上水分を吸えないほどびしょびしょに濡れていた。泣くだけ泣いて少し気分が落ち着いたポポは、誰かが自分の目の前に誰かが立っているのに気づいた。
ヨッシー「ポポ君〜、どうしたの、一人で?」
見上げるとそこには散歩帰りに偶然通りかかったヨッシーが、いつもののんきな顔で笑っていた。
ポポ「あ…ヨッシーさん…」
ヨッシー「早く帰らないとナナちゃんが心配するよ〜?」
ポポ「あ、ああ……」
ヨッシー「何かあったの〜?僕でよければ相談に乗るよ〜?」
ヨッシーのにこにこ顔に救われたような気がしたポポは、無理やりヨッシーに笑顔を作って見せた。その時、ぴゅうっという風がポポの鼻をかすめた。
ポポ「……っくしゅん!」
ヨッシー「大丈夫〜?寒い?」
ポポ「うん、ちょっと…はっくしゅん!」
ヨッシー「あらら、風邪引いちゃったかな?」
ヨッシーが心配そうに言った。ポポは笑って赤くなった鼻を袖で軽くこすった。
ポポ「う、ううん、大丈夫…」
ヨッシー「あ、そうだ、良かったらうちに来ない?あったかいスープがあるよ?」
あったかいスープ…ポポはおなかをきゅるると鳴らした。泣いている間は気づかなかったが、ずっと寒風に吹かれていたのでだいぶ体が冷えていたみたいだ。ポポは小さく頷いた。
ヨッシー「よ〜し、じゃあ一緒に帰ろう」




ポポ「おじゃまします…」
ヨッシー「ちょっと散らかってるけど、ガマンしてね〜」
ポポ「え、いや、十分きれいだけど…」
ポポは心からそう思った。チリひとつないこの家は、まるで自分たちの家みたいだ。僕のうちもナナちゃんがいつも綺麗に掃除してくれて……ナナちゃん……ナナ…
ヨッシー「どしたの、浮かない顔して?スープ入れたよ〜?」
きょとんとした顔のヨッシーが隣に座って、スープの入った皿を差し出してきた。ポポは動揺を悟られないように、ぐいっとスープをすすった。のどが焼けるように熱かったけれど、とってもおいしかった。体の芯がぽかぽかしてきて、額がうっすら汗ばんできた。
ポポ「はあ〜…おいしい!」
ヨッシー「でしょ〜?」
ポポ「んっぷ……はあ〜…あー、ごちそうさま!」
ポポは最後の一滴まで綺麗に飲み干した皿をヨッシーに手渡した。
ヨッシー「おかわりする?」
ポポ「あ、もういいや、ありがとう」
ポポがそういうと、ヨッシーはわずかにテーブルから実を乗りだした。
ヨッシー「そう、じゃあ、何があったのか話してくれるかな〜?」
ポポ「あー、うん、実は……その、喧嘩って言うか、なんていうか……」
ヨッシー「なあに?」
ポポ「あのね…」





ポポ「……って言うことがあって……」
ヨッシーは、何もいわずに、何度もうんうんと頷いてポポの話を聞いてくれた。ポポは胸の使えが取れたような気がして、とってもすっきりした。
ヨッシー「は〜、なるほど〜…う〜ん、そりゃあ怒るよね…でもさ、ばかだとか嘘つきだっていうのはちょっと言いすぎじゃないかなあ〜?ナナちゃんに悪気があったわけじゃないんでしょ〜?」
ポポ「うん……多分………」
ポポはうつむきながら答えた。ナナはそんな、人を傷つけるようなことをする子じゃない。それは言われないでもわかっていた。
ポポ(……もしかして、ひどいことを言っちゃったのは、僕のほうだったのかなあ……)
ヨッシー「でもまあ、ポポくんが悪いんじゃないんだし、そんな顔することないよ、言っちゃったことを後悔しても何にもならないしさあ〜、まあ、明日にでも ナナちゃんが謝ってきたらさ、僕も言いすぎたよ、ごめんねって言ってあげればいいんじゃないかな〜と僕は思うよ〜、まさか本気でナナちゃんのこと嫌いに なったわけじゃないんでしょ〜?」
ヨッシーの言葉に、ポポはあわててこくこくと首を立てに振る。さっきは嘘つきだなんてひどいことを言っちゃったけれど、もちろんそんなことは思っていない。
ポポ「あ、うん、もちろん、本当はすぐ仲直りしたいけど、自分から言うのは何か恥ずかしくて…それに、やっぱりナナちゃんの方から謝ってほしいと思うし…」
ヨッシー「うんうん、分かるよ〜、そうだよね〜」
ポポ「それで、あと、あの…その…出来たら、今日、泊めて欲しいんだけど……」
ヨッシー「ん?なんで〜?」
ポポ「今日一日、ナナちゃんから離れて、一人でいろいろ考えたいんだ…なんか、気持ちの整理がついていなくて、だから…」
ポポはごにょごにょと言葉を詰まらせた。何が言いたいのか、自分でも良くわからなかった。ヨッシーはそれでも笑顔でいてくれていた。
ヨッシー「あ〜、なるほどね〜、それなら泊めてあげるよ〜…あ、寮のみんなはポポ君が家に来てるって知らないよね?」
ポポ「うん、誰にも言ってない」
ヨッシー「じゃあ寮には僕が電話して伝えとくからね〜」
ポポ「あ、はい…お願いします…」
ヨッシーは言うが速いか電話を取った。後ろで見守っていたポポは(もしかしたらナナちゃんが出るかも)と思っていたが、ヨッシーの口ぶりから察するに出たのはゼルダらしかった。ポポは人知れずため息をついた。
ヨッシー「もしもし、あ、ヨッシーです〜…ゼルダさんですか?、え?ポポ君?いますよぉ?代わります?え?あ、はい、そうですかあ、わかりましたぁ……じゃあ、今日泊めてあげようと思うんで…はい、じゃあ…さようなら〜…」
ヨッシーは電話を切った。
ヨッシー「ポポ君、よかったねえ」
ポポ「…なにが?」
突然何を言い出すんだろう、という感じの訝しげなポポに、ヨッシーはなおも続けた。
ヨッシー「君はほんとに幸せものだよ〜、うらやましいねえ」
ポポ「はあ……?」
ヨッシー「さて…これからご飯なんだけどさ、手伝ってくれる?」
ポポ「あ、はい!」
どうにも腹が読めないなあ、とポポは思った。






時は回って午後十一時。二人はあまり内容のないテレビを見ていた。
ポポ「ふあ……」
ヨッシー「あ、そろそろ寝ようか〜?」
ポポ「あ、はい…あ、あの…」
ヨッシー「ん?」
ポポ「あの、急に押し掛けちゃってごめんね…」
ポポがうつむき加減にそういうと、ヨッシーは軽く頭を撫でてくれた。
ヨッシー「気にしないでいいよ〜、また来てくれたら歓迎するよー…でも、布団が1枚しかないんだけど…僕と一緒でもいい?」
ポポ「あ、うん!」
むしろポポは一緒に寝てくれる人がいるのが有難かった。ポポは体を丸めてヨッシーの隣に横たわった。
ポポ「狭くない?」
ヨッシー「うん…あ、そうだ〜、ちゃんとトイレ行った?おねしょしちゃ駄目だよ?」
ポポ「なっ…そ、そんなことしないよ!」
ヨッシー「ホント?ナナちゃんは結構…」
ポポ「僕はたまにしかしないよ!」
ヨッシー「たまに?」
ヨッシーがいたずらっぽい目でこちらを見ている。ポポは顔がかあっと熱くなった。
ポポ「あ…」
ヨッシー「ほお〜、たまにねえ〜(ニヤニヤ)……」
ポポ「あ、あの…」
ヨッシー「僕は口が軽いから、お友達とかに言っちゃうかもなあ(ニヤニヤ)…」
ポポ「や、やめて、お願い、誰にも言わないで!」
ヨッシー「分かってるよ、冗談冗談、言わないよ♪」
くすくすと笑うヨッシー。ポポもつられて、口では文句を言っているのに顔は笑ってしまった。
ポポ「もぉ〜、やめてよ〜」
ヨッシー「あはは、わかったわかった、じゃあそろそろ電気消していい?」
ポポ「あ、うん、いいよ」
ヨッシー「おやすみ〜!」
ポポ「おやすみなさい」


ポポ「ヨッシーさん、寝付きいいなあ…………」
ポ ポはヨッシーの寝顔をぼーっと見つめていた。いつもなら自分も割とすっ……と眠りにつけるタイプなのだが、今日はちっとも眠れない。ポポは何度も布団の中 で寝返りを打ったり、姿勢を変えたり、布団をばたばたと足で掻いたりしてみたが、あまり効果はなかった。ナナが隣にいないのが、無性にさびしかった。考え まいとしても、頭に浮かぶのは彼女の顔ばかりだった。
ポポ(ナナちゃん、一人でちゃんと寝れてるかな……さっき押し倒しちゃったけど、怪我しなかったかな……ごめんね)
ポポは何度も何度も、心の中で謝った。結局眠りにつく事ができたのは、明け方だった。




チリリリリン……耳元でけたたましくなる電話の音で、ヨッシーは目を覚ました。
ヨッシー「はい、もひもひ…ほあ?ゼルダさん?はい、はい」
ヨッシー「ポポ君、起きて〜」
ポポ「ん〜?まだ眠いよ〜」
ヨッシー「いいの?電話でいまナナちゃんがすぐ帰って欲しいって…」
次の瞬間、一言も発さずポポは外に飛び出していった。ヨッシーは電話を手に取ったまま、しばしぼ〜っとしていた。
ヨッシー「あら〜……」
ゼルダ「もしもし〜?ヨッシーさん?」
ヨッシー「あ、すいませ〜ん……あ、そうだ、ちょっと……」
ゼルダ「え?ええ、あ、はい、分かりました……じゃあ……はい」





ポポは猛ダッシュで家に向かっていた。なんて謝ろう、なんて言おうと考えながらのランニングだったが、結論が出 るより先に家についてしまった。言いたいことが定まるまで玄関の前で考えようかとも思ったが、結局今すぐナナの顔を見たいという衝動に負け、ドアを開けて しまった。
ポポ「ただいま……」
ナナ「あ、ポポくん…」
ポポがドアを開けると、そこには昨日泣き腫らしたのか目が真っ赤になったナナ、それと食べたこともないようなご馳走の山がポポを待っていた。
ポポ「…あ、やあ……」
ナナ「うん……」
ポポ「……」
ナナ「……」
ポポ・ナナ「あのっ……」
ナナ「え?あ、ごめん、何?」
ポポ「あ……いいよ、ナナちゃんから言って」
ナナ「うん……あ、あの、昨日はひどいことしちゃって本当にごめんなさい、ポポ君はわたしのためにプレゼントまで持ってきてくれたのに、わたしは何も用意しないで、それどころかお祝いの日まで忘れちゃって…こんなんじゃパートナー失格だよね……」
ナナの声は震えていた。ナナをそこまで追い詰めていてたのかと思うと、ポポは言葉が出なかった。
ポポ「……」
ナナ「でも、もし、それでもポポ君が私のことを許してくれるなら……お願い、戻ってきて……」
ナナの目から涙が滲み溢れた。ポポはナナの両肩にそっと手を置いた。
ナナ「あっ……」
ポポ「僕の方こそ……押し倒したり、嘘つきだなんて言ったりしてて……あんなちっちゃい事で怒ったりして、本当にごめんね……」
ナナ「……違うよ、ポポ君は悪くないよ……」
ナナは何度も滲んだ目元を押さえていた。その動作を見るたびにポポは胸が締め付けられるような感じがした。
ポポ「あの、それでね……きのう一日離れて気づいたんだけど……本当に、君が居ないと、さびしくて……僕、生きてけないんだ……だから、僕ともう一度一緒になって……ほしいの」
ナナ「……私も、淋しかったよ……ううっ……ひくっ……ぐすん……ごめん、なさい……」

涙をしとしとと溢すナナを、ポポは優しく抱きしめた。
ポポ「ほらほら、もう泣かないでいいんだよ?」
ナナ「だって……だってっ……うえぇん…」
ナナはポポの胸に顔をうずめて泣いていた。ポポも本当は一緒になって思いっきり泣きたかったけれど、男の意地で我慢した。
ポポ「あ、そうだ、このごちそうと飾りは何なの?」
ナナ「あの………一日遅れちゃったけど、もしポポ君が許してくれるなら、ポポ君と二人でお祝いしたいと思って、昨日の夜中から、いろいろ準備してたの…ゼ ルダさん達に手伝ってもらってお家の飾りつけしたり、昨日忘れてたプレゼントも作ったり、ポポくんが好きな唐揚げもいっぱい作って…………」
ポポ「え?そうだったの…?ありがとう、僕のために…僕、うれしいよ」
ポポは高ぶる感情が抑えられず、緩く抱いていたナナを思いっきり抱きしめた。ナナは肩の力が抜けた様に、ポポにもたれかかった。
ポポ「お、おっと!危ないよ?」
ナナ「よかった、喜んでくれて……」
ポポ「さ、さあ、せっかく用意してくれたんだし、早くお祝い始めようよ、話したいことも一杯あるしさ」
ナナ「うん……!」





チン!二人はグラスを鳴らした。ちなみにグラスの中身は当然ジュースだ。
ポポ「それじゃあ、僕たちの仲がこれからもうまくいきますように」
ポポ・ナナ「かんぱ〜い!」
ポポ「っ……は〜っ、やっぱり二人で飲むとおいしいね〜」
ナナ「うん……はい、どうぞ」
ポポはナナが差し出してきたお皿を受け取ると、手ごろなのをひとつ口にぽいっとほおりこんだ。肉汁がじわっとあふれた。
ポポ「あ、あふぃ……」
ナナ「だ、大丈夫?」
ポポ「……うん、やっぱりナナちゃんの作った唐揚げは美味しい!最高!」
ナナ「や、やだ…誉めすぎだよ…」
ポポ「ぼくはホントにそう思うよ?」
ナナ「ありがとう…そ、そうだ、これ…」
ポポ「うん…?あ、マフラーだ!」
ナナ「うん…昨日…一晩で…つくりかけのやつを一気に縫って…だからちょっと汚いけど…」
ポポ「ううん、お店に売ってる奴よりこっちのほうが好きだよ、ありがとう!ずっと大事に使うね!」
昨日のことなどすべて忘れて、二人は一緒の時間を楽しんだ。誰も入り込めない、二人の世界の中で。








ヨッシー「よかった〜」
ゼルダ「ええ、本当に」
仲良く家の外からそっと見守っていた二人はにっこりと、顔を見合わせて微笑んだ。
ゼルダがちょっとだけ二人をうらやましく思っていたのは、また別の話。

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