やっぱり2番手の男


「あ、あの、ルイージさん、これ……」
そういってナナが差し出したのは、丁寧に包装されたチョコレート菓子。そう、今日は年に一度の、乙女が意中の異性におおっぴらに告白する日……バレンタインデーだ。

とはいっても、もちろんナナが手渡そうとしているのは、いわゆる本命チョコではない。年端も行かない女の子が立派な大人に告白なんぞしたら、いろいろと問題になるだろうし、それ以前に彼女にはポポがいる。彼女が今ルイージに渡そうとしているのは、いわゆる義理チョコというものだ。

「どしたの?早くもらってあげなよ」

ナナの隣ではポポがにやついている。本命をすでにもらっているのか、口元には明らかな笑みが見られた。早く自分の部屋に戻って、ナナの手作りチョコにむしゃぶりつきたいのだろう。

「うん、ありがと」
が、ポポとは対照的にルイージの顔は浮かない。浮かれているポポはそんなことに気づきもしなかったが、ナナはなんとなくそのことを察していた。しかし気の弱い彼女はなんと声を掛けていいのか思い浮かばなかったらしく、後ろをなんどか振り返りつつも、結局何も言わずにルイージの部屋を出て行ってしまった。二人が部屋から出て行くと、大きくため息をついた。

「……」
ルイージの机の上にはすでにいくつかのもらい物が置かれていた。ゼルダからもらったもの、ピーチ姫からもらったもの、サムスから、そして今もらったナナから、キノピコから、プリンから……。にもかかわらず彼は浮かない顔をしている。

バレンタインだというのにも関わらずクラスの、あるいは職場の女性から一切声をかけられることなく寂しく帰宅し、その日の夜に布団の中で「やっぱクラス(職場)の女には俺の魅力なんかわかんねーんだろうな、つーかあんなブスどもにちやほやされたってぜんぜんくやしくねえし、マジ平気だし」などと一人で誰にも聞かれていない言い訳をしている恋愛至上主義社会の敗者が見たら激昂しそうな光景だ。

「はぁ……いいな、ポポは……兄さんも、リンクさんも」
だがしかしそれでも、ルイージはポポが、マリオが、リンクが、羨ましかった。確かに自分にチョコを渡してくれる人がいるのは嬉しい。自分を気にかけてくれる人がいるだけで、生きている価値があると思える。が、彼にチョコレートを渡した女性たちの中に、彼のことを一人の男性としてみている人は一人もいないことに気が付いていた。ピーチ、ゼルダ、サムスの三人はよい友達、ナナとキノピコとプリンは優しいおじさんとして見ているということに、彼は気が付いてしまっていた。

ルイージにとって一番愛しいはずのデイジーは、なぜかバレンタインにチョコをくれることはなかった。彼女が照れているのか、忘れているのか、それともこういうイベントに興味がないのかは分からないが、もらえなかったことは少なからずショックだった。先ほどのポポの嬉しそうな顔が一瞬頭に浮かび、それをすぐにかき消す。兄やリンクはまだしも、小さな子供に対して嫉妬するなんて最低だ、という意識が彼にはあったし、辛い体験もいろいろしているらしい彼らには幸せになってもらいたいと、心から思っていた。

「本命、欲しいな……」
思わず本音がポツリと漏れる。ルイージの少し贅沢だが切実な悩みは、誰にも聞かれることなく掻き消えた。

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