ごろごろの時間


よく晴れた日の秋の午後。ポポは一人で退屈を持て余していた。久しぶりに一緒に遊ぼうと思っていたネスとリュカが、知らないうちに二人だけでどこかへ出かけてしまっていたからだ。友人二人に予期せぬ置いてきぼりを食らったポポは、しばらくの間一人で自分が正義の味方となって世界を救うという妄想にふけっていたが、やがてそれにも飽きると相棒であるナナの待つ自室へと向かった。彼女とならなにもない退屈な時間でも、穏やかに楽しく過ごせるだろうと考えたのだ。
「ナナちゃん、あーそぼっ!……あれ?」
ノックもせず部屋の扉を開けたポポは、ナナが布団にくるまって寝込んでいるのを見て驚く。ナナはポポに気がつくと、首から上だけをくるりと動かし、おぼろげな視線でポポの方を見た。何かあったのだろうかと疑問に思ったポポは、ナナのそばに駆け寄って尋ねた。
「ナナちゃん、どうしたの?大丈夫?」
「ごめんね、今日はちょっと……」
「どしたの?風邪ひいちゃった?」
「そういうわけじゃないんだけど、なんか元気が出なくて、体がだるくて」
「そっか、じゃあ仕方ないね」
「ごめんね、せっかく誘ってくれたのに……」
「いいよ、気にしなくても」
ポポは申し訳なさそうに謝るナナの頭をそっと撫で、ナナの隣に腰を下ろす。ナナはその様子を声も出さずに見守り、一度目を瞑ってからまた開いた。気まずくなったときに、ナナが良くやるしぐさだ。ポポはその様を見て、困ったように眉を下げる。そんな申し訳なさそうにしないでもいいよ、とポポはナナの肩を軽くたたいた。
「あ、そうだ。元気が出ないなら、ちょっとお話しようか」
「あ、うん……」
いまいち乗り気でないナナを尻目に、ポポはナナの隣にごろりと転がる。昔からナナは特に原因があるわけでもなく、ただなんとなく塞ぎこむようなことがたまにあるのだ。ポポもそのことが分かっているから、ナナに文句を言ったりはしない。そんなときはただ彼女のそばにいて、ナナの気分が晴れるのを待つのが一番だと、ポポはいままでの経験から理解していた。
「最近、何か楽しいこととかうれしいこととかあった?」
「う〜ん、あ、そうだ、この間私が育てた野菜をゼルダさんにプレゼントしたら、すごい喜んでくれたよ」
ナナの顔が少し明るくなり、ポポはそのことに安堵する。感情表現がどちらかといえば苦手な彼女がこうして笑顔を見せてくれるということは、どうやら何か特別深い悩みがあるわけではないと推測できるからだ。このまましばらくおしゃべりしていればナナの気も晴れるかな、と思ったポポは、ナナにつられて自然と笑顔になる。
「そっか、良かったね」
「うん……ポポくんは、何かいいことあった?」
「ん〜、ぼくは……そうだね、やっぱりこの前君と登山に行けた事がうれしかったかな」
「そっか、私もあの時は、楽しかったよ」
「ね、楽しかったよね、今度また行こうね」
「そうだね、行きたいね」
「他には、何か楽しいことあった?」
「え、そうだな〜……あ、そうだ、昨日サムスさんと一緒にお風呂入ったよ」
「うん、それでそれで?」
「それで、そのときに髪の梳かし方を教えてもらったり、体を洗ってもらったりして、すごく楽しかったよ」
「そうなんだ、よかったねぇ」
ポポの曇り1つない満面の笑み。そのまぶしさにナナは若干目を細める。なんでこの人はこんなにも自分に良くしてくれるのだろう、とナナは首をかしげた。
「ねえ、ポポくん、何でそんなに笑顔なの?」
「んー、ナナちゃんが楽しそうにお話してくれるから、ぼくまで楽しくなっちゃった」
「そっか、ありがと……私もポポが楽しそうにしてると、うれしいよ」
「えっ……そっか、良かった」
会話を止めて見つめあう二人。流れる静寂。二人はどちらからともなく手を握り合い、顔を突き合わせてふふふと笑いあう。それからポポはナナの頬に手をあて、軽くくすぐる。ナナはそれを抵抗もせずに受け入れ、再び二人で笑いあう。甘美な時間が二人を包む。しかしそんないい雰囲気を、すぐにポポの腹の虫が破った。
「あ……ポポくん……」
「えへへ、おなか空いちゃった」
「あ、じゃあ私が何か作るよ」
そういって布団からナナは体を起こす。ポポは急に元気を取り戻したナナを見て、不安そうに尋ねた。
「え、もう元気でたの?」
「あ、うん、なんかポポ君とお話したらすっきりした」
「そっか、よかった、じゃあぼくナナちゃんが作ったスープが飲みたい」
「わかった!」
先ほどまでの落ち込んだ様子はどこへやら。ナナは布団から飛び起きると、とてとてと厨房へ駆けていく。ポポはそれに安堵して、ほうっとひとつ息をつくのだった。

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