Drの看病日誌



山登りで重傷を負ったポポは俺、Drマリオの病院――といってもスマブラ寮の端っこにある医務室だけど――に入院している。医者がこんなことを言っちゃいけないが、正直入院患者が入ってくるのは嬉しかったりする。孤独を紛らわせてくれるから。


入院2日目 昼。
ポポ「ん〜…おはよ…」
窓から差し込む夕日のまぶしさに目を細めながらポポが体を起こす。まだ多少疲労の色が見えるが、一時よりはだいぶいいみたいだ。
Drマリオ「よお、よく眠れたか?」
ポポ「あ、うん………ナナちゃんは?」
Drマリオ「ああ、彼女か…なんか疲れちゃってるみたいだったからさ、無理しないで寝てこいって言ったんだけど、「私が看病します!」って聞かなくてさ……」
ポポ「あ、そうなの……?」
Drマリオ「そんで仕方ないんで今、姫に無理矢理寝かしつけてもらってるところだ」
ポポ「そっか……ごめんね、なんかいろいろ迷惑かけちゃったみたいで…」
なんだか申し訳なった、ポポがぺこりと頭を下げる。俺が気にしなくていいよ、と笑いかけると、ポポもつられたのか笑顔になった。まっすぐな、俺にはまぶしい笑顔だった。いたたまれなくなった俺は話題を変えた。
Drマリオ「あ、そうだ、ひとつ聞きたいことがあるんだけど……」
ポポ「なに?」
ポポはちょっと身じろいだ。
Drマリオ「お前、ナナちゃんに告白したって聞いたけど本当なのか?」
ポポ「え……な、なんで、そんな、あの……」
Drマリオ「なんでって…当事者のナナちゃん本人から聞いたんだよ…もうみんな知ってるぜ」
ポポ「え?ナナちゃん言っちゃったの!?やだもう、恥ずかしい……」
じいっと見つめてくる俺の視線が恥ずかしかったのか、ポポは思わず顔を伏せた。子供っぽくて可愛い動作だ。
Drマリオ「ってことは…彼女の言ってたことは本当だったんだな?」
ポポ「うん………」
Drマリオ「そっかあ、おめでとう…!大事にしてやれよ?」
ポポ「うん………」
ちょっと顔を赤らめながら、ポポは頷いた。
Drマリオ「それでさ……具体的はなんて言って告白したんだ?彼女そこまでは教えてくれなかったんだよ」
ポポ「え?な、なんでそんなこと言わなきゃなんないんだよお…」
Drマリオ「いいじゃないか、話してくれたら治療費半額にしてやるからさ、頼むよ」
ポポ「うう…そういわれると弱いなあ……分かったよ、言うよ……」
Drマリオ「なになに?」
ポポ「その…僕でよかったら……これからもずっと一緒にいてくださいって…………」
Drマリオ「ほほおう……それで、彼女は何て言ったの?」
ポポ「私こそ…よろしくお願いしますって言ってくれた……」
Drマリオ「ほーー………ほほうほうほう……なぁるほどねえ…」
ポポ「あーもー!こんな恥ずかしいこと言わせないでよー!今のこと絶対二人だけの秘密だからね!」
ポポは顔を真っ赤にしてぽかぽか俺をたたいてくる。ちょっとからかいすぎたかな?
Drマリオ「ははは、わかったよ……さ、もう一度寝なさい」
ポポ「は〜い……」




Drマリオ「ん?」
治療も終わったのでそろそろ引き上げようとしたら、ポポが俺の裾をつかんできた。見ればひどく怯えた目をしているじゃないか。俺はなるべくこの子が安心できるように、優しく声をかけた。
Drマリオ「何だ、トイレか?」
我ながら的外れなことを聞いちまったな、と思った。ポポは俺の言葉が耳に入っているのかいないのか、「違うの………あの………」と、あたふたと視線を泳がしている。
Drマリオ「なんだ?あわてないで言ってみな」
ポポ「えっと、その…恥ずかしいんだけど……いつもナナちゃんと寝てるから…その…一人になるのに慣れてなくて……で、あの……隣で一緒に寝てほしいの……」
ポポはそこまで言うと恥ずかしそうに言葉をフェードアウトさせた。その様が愛らしかったので、俺はちょっと意地悪してやることにした。俺が「どうしよっか なあ…自分家のほうが落ち着くし、やめとこっかなぁ……」と言うと、ポポは「そんなあ…お願い、一人じゃ怖いよ…」と言って泣き付いて来た。俺は仕方なさ そうに頷いてみせる。
Drマリオ「しょうがねえなあ……わかったよ」
ポポ「ホント!?ありがとう…!さ、こっち来てこっち来て」
さっきまでの怯えた表情はどこへやら、ポポはうれしそうにぽんぽんと自分のベッドを叩いている。俺は苦笑しながら電気を消すと、その隣によっこいしょと転がった。
Drマリオ「よいしょっと、じゃあな、おやすみ……」
ポポ「うん……おやすみなさい」
Drマリオ「ん……彼女も寂しがってるかもしれないからな、いっぱい寝て早く元気になれよ…」
ポポ「は〜い………」


「…………」
誰かに呼ばれたような気がして振り向くと、ドアの影から顔をちょこんと出してこっちをのぞいているポポの彼女―ナナちゃんと目が合った。何でかわからないが、俺を含めてみんなこの子はちゃん付けで呼んでいる。
ナナ「あの…………」
Drマリオ「遠慮しないでいいよ、おいで」
ナナ「あ、はい…お邪魔します……」
俺が手招きをすると、彼女は居心地悪そうにおずおずと医務室に入ってきた。やはりこういうところには慣れてないのだろうか?俺は彼女の緊張をほぐすように言った。
Drマリオ「どうだ、疲れはとれたかな?」
ナナ「あ、はい…もう大丈夫です」
Drマリオ「そうか、そりゃあ良かった…」
ナナ「はい……」
Drマリオ「うん……えっと……どう、したのかな?ポポは今ちょっと寝てるんだけど…」
なんだかポポのときと比べて会話が上手くいかない。彼女はちょっと緊張しているみたいだ。ひょっとして俺が怖いんだろうか?
ナナ「あの………」
Drマリオ「ん?」
ナナ「ポポ君、どうですか?」
Drマリオ「えっ?あ、ああ、さすがに体力あるだけあって治りが早いよ…もう二週間くらいで歩けるようになるかな」
ナナ「そう、ですか…ありがとうございます…!」
彼女はちょっと緊張が解けたのかにっこりとポポとよく似た、愛らしい笑顔を見せた。なるほど、この笑顔ならポポが惚れるのも頷ける。
Drマリオ「よかったね、ポポも喜んでるぞ」
ナナ「はっ、はい………」
Drマリオ「あとはなんかあるかな?」
ナナ「あっ、そうだ、あの、治療費のことなんですけど…実は、その……言いにくいんですけど……お金無くて……それで、あの、今は返せないけど、大人になったら…」
Drマリオ「あ、何だ、そのことか、いいさ、金なんかいいさ」
ナナ「えっ、でも……」
俺の返事が予想外だったようで、彼女はちょっと驚いたように目を丸くした。ポポの驚いた顔とよく似ていた。
Drマリオ「いいって、ポポに楽しい話一杯聞かせてもらったからな、それが治療費代わりだ」
ナナ「楽しい話…ですか?」
ナナがよく分からない、といった感じで首をかしげる。これまたポポとよく似た仕草だった。
Drマリオ「そー、いろいろ聞かせてもらったよ、初めて会ったときナナちゃんに一目ぼれしたこととか、ナナちゃんの笑顔がすごく好きだとか、聞いてるこっちが恥ずかしくなるような惚気話をなあ」
ナナ「えっ…………な、何でそんなこと聞いてるんですか…?」
Drマリオ「ポポが寝るときいろいろと話してくれたんだよ」
ナナ「そ、そんなあ…………」
Drマリオ「まあまあ、そんな恥ずかしがらなくたっていいじゃん、悪いことしたわけじゃないんだから」
ナナ「はうう……だってぇ…」
Drマリオ「ははは……」


ヨッシー「お見舞いに来たよ〜、元気〜?」
ポポ「あ、ヨッシーさん、ありがとう!」
ヨッシー「はい、フルーツだよー」
ポポ「わ〜い!なに?」
ヨッシー「ドリアンだよ〜」
ポポ「わ〜…臭い!や、やめて、近付けないで!」
ヨッシー「なんで?おいしいよ〜?食べなよ〜」
ポポ「わ、分かった、食べるからやめて!」

入院7日目
ポポ「マリオさん、ご飯の時間まだ?」
Drマリオ「え?まだ四時半だぞ?もう腹減ったのか?」
ポポ「そうじゃないんだけど…外にでられないと、お話することと食べることくらいしか楽しみがなくて……テレビもおんなじ様なスポーツばっかでつまんないし……」
ポポがテレビのリモコンを手元で弄びながら言った。確かに遊び盛りの子供に入院生活は退屈だろう。
Drマリオ「そっかあ………そうだよなあ、よし、それじゃあ俺の本を貸してやるよ」
ポポ「いいの?ありがとう!」
ポポは嬉しそうに体を起こした。
Drマリオ「えーと…これなんかどうだ?」
ポポ「なんの本?」
Drマリオ「医療倫理の本だ、結構ためになる事書いてあるぞ?」
ポポ「…う〜ん…よくわかんないや…」
Drマリオ「じゃあこっちの日本医薬品集はどうだ?」
ポポ「………やっぱご飯の時間までテレビ見てることにするよ」
Drマリオ「そうかあ、残念だなあ、面白いのに」

入院8日目
ポポはリハビリに励んでいた。ナナに方を貸してもらいながら、まだ痛む足で懸命にヨチヨチと歩く。
Drマリオ「そうそう、ゆっくりでいいからな、無理しないで、そうそう、いい感じ……」
ポポ「よいしょ、よいしょ、よいしょ………わっ……!」
ナナ「危ないっ!」
倒れそうになったポポをナナがあわてて支える。
Drマリオ「大丈夫か?」
ポポ「うん……」
Drマリオ「よし、今日はこのくらいにしておくか」
ポポ「ホント?!やったあ!」
ポポが嬉しそうに返事をする。
Drマリオ「よしよし、今日もよく頑張ったな、偉いぞ」
俺に頭を撫でられると、ポポの顔がぽっと朱に染まった。こんなことで喜んでもらえるのなら、いくらでもやってやるよ。
ポポ「えへへ〜」
ナナ「お疲れ様、ポポ君」
ポポ「うん!」
ナナがポポの顔を手製のタオルで拭う。ああ、うらやましい…って何を考えてたるんだ俺は…
ナナ「どうかしました?」
Drマリオ「い、いや、別に?」
ナナ「そう…それじゃあ私…お風呂言ってくるね」
ポポ「うん、いってらっしゃい」
ナナ「Drマリオさん、失礼します……」
Drマリオ「うん、また明日ね」
ナナ「はい」
彼女はそういうともう一度ぺこりと頭を下げて、とてとてとお風呂に向かっていった。
ポポ「あ〜あ、行っちゃった…」
Drマリオ「よし、お前も体拭くぞ、上着とりなさい」
ポポ「あ、は〜い」
ポポが上着をはらりと落とす。その体に俺はタオルを当てて、ごしごしと拭く。普段は防寒服で隠れていてわからないが、ポポの体は同性の俺から見ても羨ましくなるような、逞しいものだった。それに比べて俺の体ときたら……はあ。
ポポ「い、いたい!もっと優しくしてよ…」
Drマリオ「え?ああ、悪い」
いかんいかん、ついぼーっとしてしまってた…頭をぶんぶん振って気合を入れて、もう一度タオルでポポの体を撫でる。
ポポ「ねえ…」
Drマリオ「ん?まだ痛い?」
ポポ「そうじゃなくて…そろそろ、僕もお風呂入りたいな、って…」
Drマリオ「…彼女と一緒にか?」
ポポ「ち、違うよ!ずっと入ってないから入りたいって意味だよ!変なこと言わないでよ!」
顔が一瞬で真っ赤になったポポが俺の頭をぽかすかとたたく。ちょっとからかっただけなのに…
Drマリオ「こ、こら、やめなさい、分かったからそんなに怒るなって」
ポポ「だって……急に変なこと言うんだもん」
Drマリオ「だからごめんってば………しかし…いいよなあお前は、毎日お見舞いに来てくれる子がいて…うらやましいなあ」
ポポ「えへへ、いいでしょー……そうだ、Drマリオさんは彼女いないの?」


………………

………………

………………

………………

………………

………………

聞かれてしまった!最も気にしていることを…!聞かれてしまった…!

Drマリオ「………………」
ポポ「あ、ご、ごめんなさい!そ、そういう意味じゃなくって、僕、あの、その…」
ゴシゴシゴシ……
ポポ「……あっ…ちょ、ちょっと!もっと優しく拭いてよ…っ!」
Drマリオ「悪かったなあ!どうせ彼女なんかいませんよ〜!(ごしごし)」
ポポ「ご、ごめんなさい!そんな気にしてたなんて知らなくて…っ!」
Drマリオ「このやろこのやろ!うらやましいぜチクショウ!(ごしごし)」
ポポ「い、痛いってばあ………」

明日はいよいよポポの退院予定の日だ…が。ポポはなんだか元気がない。どうしたんだ、悩み事か?と俺が聞くと、ポポはうつむき加減にうん、と言ってから「最近みんなあんまりお見舞いに来てくんなくなったなあ…」
と言った。俺が「まあまあ…みんないろいろ事情があるんだよ、仕事とかさ」と言っても
「そうかもしんないけどさー……」と言っただけだった。と、そのとき、ドアをノックする音が。こんこん…
Drマリオ「お、噂をすれば何とやらだ、どうぞー」
ぎい〜……
マリオ「おはよう、元気〜?」
ポポ「あ、マリオさん!」
さっきまでの曇り顔がうそのように、ポポが嬉しそうな顔で体を起こす。
マリオ「よー、調子はどうだ?」
ポポ「あ、そうだ、僕実は明日退院するんだよ…!」
マリオ「そうかあ、よかったな!」
ポポ「うん!」
マリオ「ごめんななかなか会いに来れなくて、なにぶん仕事が忙しくてなあ」
ポポ「ううん、しょうがないよ、お仕事は大事だもんね…そうだ、ひとつ聞きたいことがあるんだけどさ、ナナちゃん最近ちゃんとご飯食べてる?一緒に食べてないから分からなくて…」
マリオ「え?ああ、大丈夫だよ、たぶんな」
ポポ「ちゃんと眠れてるかな?」
マリオ「さあ…一緒に寝てるわけじゃないからそれは分からないけど…まあ大丈夫だろ、眠そうな顔してるわけじゃないし」
ポポ「ひとりぼっちになったりしてない?」
マリオ「……だいたいいつもゼルダさんかピーチ姫が一緒にいるからな、時間があれば俺が遊んでやることもあるし」
ポポ「じゃあ誰かにいじめられたりは…」
マリオ「心配しすぎだよ!なんもねえから大丈夫だって!」
ポポ「だって、心配なんだよお……」
マリオ「大丈夫だよ!周りもいい人ばっかだから!」
ポポ「だって…ナナちゃん嫌なことがあっても我慢して無理しちゃうタイプだから…なんか無理してないか心配で心配で……」
マリオ「だから大丈夫だっつーの!」
ポポ「なんか大事な相談を受けたりはしてない…?」
マリオ「ねえよ!つうか彼女がお前より先に俺に相談するわけないだろ!」
ポポ「いや、でも僕に相談しにくい事とかあるかも知れないし…体のこととか…」
マリオ「それは俺にも聞きづらいだろ!普通そういうことは同性に相談するだろ!」
ポポ「そうか…じゃあゼルダさんにも聞いてみないと…今すぐ呼んできて」
マリオ「いい加減にしろ!」

長かったポポの入院生活も今日で最後だ。まあ退院しても寝る部屋が変わるくらいで、たいした違いはないんだけど……まあともかくおめでたいことには違いない。俺はかばんに荷物をつめて廊下で俺を待っているポポに声をかけた。
Drマリオ「お〜っす、ポポ、退院おめでとう!」
ポポ「うん…ありがとう…」
あれ、なんか元気ないな…?普通退院する患者はもっと嬉しそうにするもんだけど…
Drマリオ「どうした、元気ないな?まだどっかわるいのか?」
ポポ「ううん…そうじゃなくてね、あの…Drマリオさん、入院している間いろいろ話を聞いてくれたりしてくれてありがとう、楽しかったよ」
だって。嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
Drマリオ「いやいや、俺のほうこそ楽しかったぞ、ありがとうな…ほら、そろそろ行きなさい、彼女が待ってるぞ」
ポポ「……じゃあね」
Drマリオ「じゃあな」
ポポは大きく一礼すると去っていった。………正直、自分を頼ってくれる人がいなくなるのは寂しいが、医者がそんなことを言っちゃいけない。俺は誰もいなくなったベッドを整えると、また医師会に提出するレポートに手をかけた。

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