純粋な少年とサンタ


「メリークリスマス!」
今日は1年に1度のクリスマス。元々はキリストの降誕を祝う日だが、現代ではそのような習慣は一部の国と地域を除いてはすっかり廃れ、単に飲み食いをして気の合う仲間や恋人と楽しく一日をすごす日になっている。

それはスマッシュブラザーズにしても同様で、特に信心深いわけでもない彼らは、特に深い考えもなくただクリスマスパーティを夜中まで楽しんだ。そんな楽しいパーティもひと段落し、大人たちが片付けに入ったとき、ポポがふと口を開いた。
「ナナちゃん、今年はサンタさん来るかな?」
「え……」
ポポの言葉に周りの大人たちが凍りついた。
「去年は来てくれなかったけど今年はきっと来るよね〜、僕たちこの日のためにずっといい子にしてたもんね〜」
「え、あ、うん……」
ナナが困ったように大人たちの方を見やる。周りの大人たちはどう対処すればいいのかわからず、ただただ顔を見渡せていた。
「さ、ナナちゃん、そろそろ部屋に戻ろう、早く寝ないとサンタさんが来ちゃうよ!」
「え、あ、えっと……わ、私はまだちょっとやることがあるから、先に戻っててくれる?」
「わかった!」
ポポが愛用のハンマーを担いで、部屋へと戻っていく。残された大人たちは、声を潜めて話し合った。
「おいどうする、まさかあいつがまだサンタを信じていたなんてな……」
「そうだね兄さん、あの子あれでも結構大人びてるからもうそんなものには興味ないと思ってたのに」
「どうしたもんかなあ、今からでもサンタはいないって教えたほうがいいんですかね、姫?」
「それはどうかしら……」
「あ、あの……」
「ん?」
大人たちの話からおいてきぼりを食らったナナがおずおずと割って入る。
「ポポ君の夢を、壊さないであげてください……」
「う〜ん、まあそりゃ、できればそうしてやりたいけどな。でも、今からプレゼントを用意するなんて出来ないし」
「……」
「っていうか、そもそも他の子供たちはどうなんだ?ネスやリュカは……」
輪を作っていた大人たちとナナが、部屋の端のほうで談笑していたネスとリュカを見やる。二人は苦笑して答える。
「僕たちはもうそんな子供じゃないよ、ねーリュカ」
「うん。僕たちのことは気にしないで」
「そうか……じゃ、もうサンタを信じているのはポポだけか」
「そうみたいだね……せっかく信じてるんだから、その夢は壊さないようにしてあげたいけど」
「でも、もう夜だしプレゼントなんて今から用意できないわよ」
大人たちがそろって首を縦に振る。もう夜は深い。こんな時間にやっているのは24時間営業のコンビニかディスカウントストアくらいだし、それらもここからはかなり距離がある。
「そうなんですよねえ。となると、なにか、今この場所にあるものでなんとかしないと……あ、このボールペンはどうだ?」
「それは、ポポ君が喜ばないと思います……」
「うーん、じゃあこの箱入りのティッシュは?」
「兄さん、ポポは主婦じゃないんだから……」
「そうだよなあ、こんなもんあげてもなあ……」
「う〜ん……」
一同沈黙。ポポの夢を壊さず、しかも喜んでもらえるプレゼントは何かないものか。そこまで考えをめぐらせたピーチが、ある案を思いついた。
「あ、そうだ、みんな。こういうのはどうかしら」
「なんですか?」
「絶対ポポ君に喜ばれる取っておきのプレゼントがあるのよ」
「え?なんですか、そりゃ」
「ナナちゃん、ちょっとこっちに来てくれる?」
「あ、はい、わかりました」
ピーチは頭上に大きなはてなマークを浮かべたマリオたちを尻目に、ナナの手を引っ張って自室まで行くと、彼女にクリスマスパーティに使ったリボンの1つを手渡す。
「ナナちゃん、今夜はこれをまいて寝なさい」
「?」
「そしてポポ君が目を覚ましたら、こういうのよ……」
ピーチがナナの耳元に顔を近づけ、何か一言二個とつぶやく。その言葉にナナは顔を赤らめる。
「え、そんな恥ずかしいこと言えないです……」
「そんなこといわないで、頼むわよ、あなたもポポ君に喜んでもらいたいでしょ?」
「……わかりました……やってみます」
「ありがと、きっとポポ君も喜ぶわよ」
ナナは煮え切らない感情と渡されたリボンを手に、ポポの待つ自室に向かった。

翌日。ポポはいつもより少し早い時間に目を覚ました。ポポは急いで枕元を見回した。しかし、そこには昨日自分が思い描いていたリボンで装飾が為された、プレゼントの入った箱は見当たらなかった。ポポが欲しかったのは最新ゲーム機「Wii U」。
「あれ、ない……おかしいな、ぼくのWii Uが……」
ポポがうろたえる声で、隣で寝ていたナナが目を覚ました。
「あ、ナナちゃん、おはよ」
「あ、ポポくん、おはよう……あ、そうだ、あのね、あのね……」
「うん?」
「今年のサンタさんからのプレゼントは、あの、その……私なの、なんちゃって……」
「えっ……?」
「だ、だから、今年のクリスマスプレゼントは私なの……私のこと好きにしていいから、もらってくれる?」
ポポは寝起きの頭でナナの言葉を反芻する。そして3回ほど言葉の意味を確かめてから、ポポはナナに飛びついた。
「わーい、ナナちゃん、大好き〜!」
「う、うわっ!」
ポポはWii Uなんかよりもよっぽど欲しかったナナの心を手に入れて、大満足なクリスマスを過ごしたのだった。

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