マリオブラザーズ


ある日の昼下がり。配管工の兄弟は、水漏れが止まらないというキノコ王国のはずれにある顧客の家に、配管修理に来ていた。忘れられがちだがマリオブラザースの本職は、冒険家などではなくれっきとした配管工である。二人は両手にレンチやらパイプカッターやら、修理に必要な器具を大量に携え、顧客の家の扉をノックした。

「悪いわねえ、水道管に亀裂が入ってるみたいで、水漏れが止まらないのよ」
今日の顧客は穏やかそうなご婦人だった。面倒な客ではなさそうなので、兄弟はほっと安堵する。客商売をやっているとどうしても面倒な客に絡まれることがあり、それはとても不愉快なことなのだ。
「大丈夫ですよ、すぐに直しますから」
「そんなに簡単にできるの?」
「もちろん、われわれはプロの配管工ですから。さ、始めるぞ、ルイージ」
「はい、兄さん。お客さんはあちらでお待ちください」
「あら、そうなの?心強いわね、それじゃあお願いするわ」

二人は洗練された見事な技術で水道管の配管を取り替える。配管工事はものの数十分で終わり、仕事を終えた二人はご婦人に報告に向かった。

「終わりましたよ、お客さん」
「あら、もう終わったの?早いわね、お疲れ様。代金は後日銀行振り込みでいいかしら?」
「もちろん、かまいませんよ。さ、ルイージ、帰ろう」
「はい、兄さん。それじゃお客さん、失礼しますよ」
「どうもありがとう、また何かあったらよろしくね」

二人は客に暇を告げると、会話もそこそこにそそくさと話を切り上げた。元来二人とも、知らない人間とすぐに親しくなれるタイプではないのだ。その性格が商売で足を引っ張ることもあるが、だからといって人間の性格がすぐに変えられるわけもない。二人は自分の性格とうまく付き合いつつ、なんとなくそこそこ幸福に毎日を過ごしていた。

「さ、今日の仕事も終わりだ、さっさと帰ろう」
「そうだね、兄さん」
「なんか買い物はあるか?米とか」
「いや、まだこの前買った分があるから大丈夫だよ」
「そうか」

マリオが運転する車中。二人の会話は思いのほか短い。別に中が険悪なわけではなく、二人の仲が少ない会話しか必要としていないのだ。その後二人は特に言葉も発さず、自宅までの道のりを過ごした。

場面は移り食卓。二人はいつもこうしてテーブルを挟んで、向かい合って夕食をとる。作るのはいつもルイージだ。
「今日のメシはなんだ、ルイージ」
「今日は久しぶりにカルボナーラだよ、たくさん茹でちゃったから全部食べてね」
「ん、いただきまーす」
「……」
「……」
「ねえ、兄さん」
「なんだ?」
「僕たち、いつまでこうしているのかな?」
「なんだ、今の生活が不満か?」
「そうじゃないけど……いずれは僕らも結婚したり、仕事変えたりするのかなーなんて、思って」
「さあな〜……ん、旨いなこれ」
「……」
「さ、ごちそうさん」
「はいはい、お皿は洗っといてね」
「ん……」

ルイージはなんとなく不安だった。この生活を毎日続けてていいのか。特に具体的な不満があるわけではない。ただなんとなく、結婚もせず、ただ仕事をして、友達もいて、兄弟もいて、それなりに幸せな生活を送る。それがなぜかたまらなく不安だった。

「……」
「どうした、浮かない顔して」
「いや、なんでもないよ」
「そうか、じゃあ風呂入ってくるぞ」
「はーい」

それでも、兄の姿を見ていると、自分もこのままでもいいのかな、という気持ちにさせられる。兄は一見何も考えていないように見えるが、実は違う事を彼は知っている。兄は兄なりにいろいろと考えていて、現実と上手く折り合いをつけ、どうにかこうにかいろいろな物事と付き合いながら生きているのだ。そうして立派に自分の足で立っている彼を見ていると、ルイージもまた、そうして今を生きようという気持ちになるのだ。

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