Happy Birthday!


雪山の真ん中でナナちゃんと2人きりで暮らしていたときは、誕生日は特に特別な日じゃなかった。ナナちゃんが作ってくれたお菓子といつもよりちょっと豪華なご飯を食べて、ナナちゃんからプレゼントをもらって、お互いに生まれてきたことと出会えたことに感謝して、登山のことも忘れて二人でのんびりと過ごす、ただそれだけの日。

でも、今年はそんな、いつもの誕生日は違った。ナナちゃん以外にも祝ってくれる人がいっぱいいた。みんなからたくさんのプレゼントをもらって、たくさんおめでとうを言われた。僕は今日のお昼のパーティのことを思い出しながら、布団の上にみんなから貰ったプレゼントを並べた。

ネスからは野球のバットとグローブ、ボールをもらった。僕、野球のルールとか良くわからないんだけど……ま、いいや、今度ナナちゃんと一緒にボール投げでもして遊ぼうっと。

リュカ君からは新しいゲームソフト。今度みんなで一緒に遊びたいな。トゥーンリンクからは弓矢のセット。う〜ん、剣士さんの考えることは良くわからないや。

カービィからは沢山のりんごをもらった。普段はナナちゃんを泣かせたりするし、本気でけんかすることもあるけど、いいところもあるんだね。

グーイさんからは元気が出るジュースをもらった。正直あまり話したことないけど、ナナちゃんがお世話になっているって言ってたくらいだから、きっと優しい人なんだろうな。

マリオさんとルイージさんからはお菓子の詰め合わせを2セット。ナナちゃんと分けっこできるように、ちゃんと考えてくれてたみたい。そういうところまで考えられる大人って、やっぱりすごいな。

ピーチさんとゼルダさん、サムスさんからはバースデーケーキをもらった。今まで食べたことがないくらい、豪華で綺麗でおいしそうなチョコレートのケーキだった。あとでナナちゃんと二人で食べようっと。

そして、ナナちゃんからは、手編みのマフラーをもらった。マフラーはふわふわしてて、とってもあったかい。ほかの人には悪いけど、やっぱりナナちゃんからのプレゼントが一番うれしいな。ナナちゃんの今度の誕生日には、僕も喜んでもらえる物をプレゼントしよう。

「来年の誕生日、速く来ないかな……」
そんなことを考えながら、もらったマフラーを手でもてあそんでいると、僕と色違いのパジャマを着たナナちゃんが何かの入った袋を持って僕の前に立った。なんだろ?
「ポポ君、あのね……」
「なーに?」
「あの、これ、受け取って欲しいんだけど、いいかな……」
ナナちゃんはもじもじと袋を差し出してきた。僕はマフラーを見せながら答える。
「え、でも、さっきこれ貰ったよ?」
「うん、でも、それとは別に貰ってほしいの」
「そっか、じゃあ貰うよ、ありがとね」
ナナちゃんから袋を受け取って、袋の口を結んでいる紐をほどいて中身を見る。中には、綺麗なきつね色に焼かれたのクッキーが入ってた。
「あ、クッキーだ……焼いてくれたの?」
「うん、ポポ君が作って欲しいって言ってたから」
思わずほっぺたが緩んだ。自分で言うのもなんだけど、なんとなく言ったことまで覚えてくれてるなんて、とっても愛されてるなあ、僕。
「どしたの、にやにやして?」
「あ、な、なんでもないよっ!」
「そう……食べてみて?」
「うん、いただきます!」
きつね色に焼かれたかわいらしいクッキーを手に取って、静かにかみ締める。おいしい。どんなパティシエが作ったクッキーよりも、おいしかった。
「うん、おいしい、すごくおいしいよ、ナナちゃん」
「良かった……」
ナナちゃんがほっと一つ息をはいて、控えめな笑顔を見せてくれた。僕もそれに釣られて笑顔になる。
「ナナちゃんも食べなよ、おいしいよ?」
「あ、うん……ありがと、それでね、もう一個だけ、もらって欲しいものがあるの」
「うん、何?」
「あのね……あのね……わ、私……」
ナナちゃんの言葉がだんだん小さくなって途切れた。僕は聞き逃さないように、顔をぐいっとナナちゃんに近づける。
「なに?も一度言ってくれる?良く聞こえなくて……」
「だから、私……」
「え?」
「だ、だから……私のこと、もらってほしいの……私を、お嫁さんに……」
ぶっ!僕は思わず食べていたクッキーを噴き出した。お嫁さんだって!?ナナちゃん、誰かになんか吹き込まれたのか!?
「ねえ、お願い、何でもするから、私のこともらってっ!」
ナナちゃんが僕を押し倒す。ど、どうしよ、いやな気分はしないけど、でもなんかやっぱりまずいよ、これは!
「ま、まって、とりあえず落ち着いて!ね?」
「え、あ、ご、ごめんなさい」
ナナちゃんは一瞬はっとしたような顔をして、それから顔全体を真っ赤にした。僕は落ち着かせるようにナナちゃんの顔を一度なでて、ゆっくりとカラダを起こした。あー、びっくりした。
「もー、突然押し倒されたから襲われるのかと思っちゃったよ」
「ごめんね、痛かった?」
「あ、いや、大丈夫だけどさ、別に……でもなんで突然お嫁にしてとかいったの?今のままでも十分、一緒に居られると思うけど、それじゃだめなの?」
「私って、ポポ君の何なのか、教えて欲しいんだけど」
「え?えっと、それは、こ、恋人だよ……ちゃんと昔、告白したじゃん、僕の彼女になってくださいって」
「うん、あの時はすごくうれしかった。でも、もう恋人じゃいやなの」
言っている意味が良くわからなくて、僕は「どういうこと?」と聞く。ナナちゃんはあのね、と小さく口にして、言葉を続ける。
「私、ポポ君の正式な奥さんに……ううん、家族になりたいの、お願い、私のこともらって。絶対、いい奥さんになるから、だから……」
ナナちゃんが僕の両肩をつかんだ。僕はナナちゃんをどうにかなだめて、頭を抱える。
「うう〜……」
そりゃあナナちゃんは大好きだよ。将来は結婚して、楽させてあげたいとも思っている。でも、僕の年齢じゃまだ結婚できないって事も、僕は知っている。というか、ナナちゃんだって知らないわけない。なのにナナちゃんは何でこんなことを言うんだろ?
「ポポ君……」
「あ、うん、ほら、ナナちゃん、気持ちはうれしいけど、僕たちまだ子供だし」
「だから、何?」
「え、だから、えっと今は確か18……あ、16だっけ?とにかくそのくらいにならないと、結婚できないんだよ」
「どうして?」
「どうしてって、法律でそう決まっているから」
「法律なんて、そんなの知らない大人が決めたことじゃん……そんなのより、私の気持ちのほうが大事だもん。年齢なんて関係ないよ」
これはまずい。普段はおとなしくてまじめなナナちゃんだけど、時々こうしてとんでもないことを言い出すことがある。その時々見せてくれる行動力はすごいな、僕にはまねできないなって思うけど、でも、今回はちょっと困っちゃったな。とりあえずゆっくりお話して、ナナちゃんを落ち着かせないと。
「だから、ポポ君、私と……」
「うん、ちょっと待って。僕だってナナちゃんの気持ちは大事だよ。でも、僕達が市役所に行っても結婚届とか受け取ってもらえないよ?それはわかるでしょう?」
「わかってるよ……でも、私……」
「それに、結婚って言うルールだって、知らない大人が作ったものじゃないの?僕は、結婚なんてルールがなくても、ナナちゃんとずっと一緒にいるよ」
「ポポ君……」
思いつくままにしゃべっていただけど、ナナちゃんは納得してくれたような顔をしている。よし、あともう少しだ!どうやってなだめよう……、あ、そうだ、こんなのはどうかな?
「あ、じゃあさ、こうしようよ、今度大人の誰かに頼んで、婚姻届をもらいに行ってもらってさ、それに二人でサインしようよ。それで僕達が大人になったら、二人で出しに行こう、ね?」
「……うん、そうする」
ナナちゃんが納得してくれたみたいなので、僕はほっと胸をなでおろした。
「びっくりしちゃったよ、突然ナナちゃんがすごいこというから」
「ごめんね、私、なんだかすごく焦っちゃって……」
「ん、いいよ、結婚したいって言ってくれて、嬉しかったから。ちゃんと大人になったら、今度は僕のほうから言うからさ」
「うん、わかった、待ってるね」
ここで終われば、いつもの何気ない幸せな日常。でも今日はナナちゃんがいとおしくて、ちょっと意地悪を言ってみたくなった。
「ナナちゃん」
「ん?」
「結婚するってなったらさ、あの、ちゅーすると思うんだけど、僕がもしさっき受け入れてたら、ちゅーしてくれた?」
「え、あ、う、うん……」
とたんに真っ赤になるナナちゃん。こういうすぐにあわてちゃうところ、とってもかわいい。
「じゃ、予行演習ってことで、ここでチューしちゃう?ぼくはナナちゃんとなら、してもいいよ?」
「あ、あ、私たち、まだ、子供だし……」
「年齢なんて関係ないよ」
「あ、さっきの私と、同じこといってる……」
ナナちゃんが思わぬ突っ込みを入れたので、僕は思わずふふっと笑う。別にまねたりするつもりはなかったんだけどね。
「あ、笑わないでよー」
「ごめんごめん、さ、冗談はこの辺にして、そろそろ寝るよ」
「あ、うん、わかった」
僕はプレゼントを片付けると、ナナちゃんと同じ布団に入って、両目を閉じた。

来年の誕生日も、いい日になりますように。

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