50年後も


2058年1月31日。この日はスマッシュブラザーズの結成からちょうど50周年に当たる日だ。その事をつい先日思い出したピーチは、今はほとんど会うこともなくなったかつての仲間たちに久しぶりに会いたいと思い、歳に似合わぬ行動力でピーチ城の一郭を押さえると、かつての女友達たちに連絡を入れた。
あのときの女友達は幸運にも全員が存命だった。そして、1月31日は偶然にも皆のスケジュールが白紙だった。かくして今、ピーチ城の1階、会議室にかつてともに戦い、笑いあった仲間たちが終結した。
「いやあ、こうして集まるのも久しぶりね。みんな、元気だった?」
この中で最年長のピーチが、あの時と変わらない屈託のない笑顔で言う。年の頃はもう80に近いはずなのだが、驚いたことに腰も曲がらず口調もはっきりしている。招かれたかつての仲間たちは、久しぶりに会った彼女の若々しさに安堵した。
「そうねえ、でもあと何回こうして会えるのやら」
2番目に年長者のサムスが口を開く。賞金稼ぎをかなり前に引退した彼女は、そのとき貯めた資金を元に平穏な隠居生活を送っていた。かつて多くの男を魅了したその美貌は今ではわずかに面影を残すのみだが、それでも彼女らしい口利きは相変わらず残っていた。
「もう、今日はそういう話は無しにしましょ。みんな元気でよかったじゃない」
3番目に年長者のゼルダが諭すようにいう。今では姫という職も後進に譲った彼女は、今ではわずらわしい政治の世界から離れて市井の人として生きていた。リンクとは近所でも評判の熟年カップルで、よく二人で近所を散歩している姿を目撃されるらしい。
「そうですよ、もっと喜びましょうよ」
この中では一番若いナナが同調する。最も若いといってももうすでに60近い彼女だが、相変わらず彼女の外見はどことなく幼げだった。ポポとは相も変わらず熱々で、今では登山家を半引退して余生のすごし方を検討しているらしい。
「そうねー、みんな元気そうで何よりだわ」
「なーに、元気なのは見た目だけよ。腰は痛いし目もかすむし、もう長くはないわよ」
「寂しいこといわないでください……」
「はいはい、ごめんなさいね。でもあなたは若いし、まだまだ元気でしょ?」
「そうでもないですよ、もうあのころみたいに元気に飛び回ったりはできないですし……」
「あらあら、じゃああなたもいよいよおばあちゃんね」
「そうですね……あんまり、実感がないですけど」
「ポポ君は元気?」
「あ、はい、元気ですよ。最近、よく腰が痛いって言ってますけど……リンクさんはどうなんですか?」
「元気よ。今は剣じゃなくて杖を持ってるけどね。」
「そうなんだ……マリオさんは?」
「元気よ。ちょっとボケ気味で何度も同じ話をするから、ちょっと大変だけどね」
「そっか。じゃああのころの仲間は、みんな元気なんですね、よかった」
「そうね、いつまでもこうして元気でいたいものね」
「そうねぇ……」
4人は旧友との話を時も忘れて心ゆくまで楽しんだ。やがて病院の時間だからとゼルダが立ち上がり、それに合わせてポポが待っているからとナナも、電車がなくなるからとサムスもそれぞれ立ち上がった。4人はしっかりと握手を交わすと、来年の今日も、またこうして会おうと固く約束して、それぞれの帰路についた。






あれから50年後、2108年1月31日。いまではもう、彼女たちを知るものは誰もいない。そう、今はもう、誰も彼女たちを知らない。ばらばらに建てられた4つの墓石が、彼女たちの存在を所在無さげに語るのみだった。

Tweet


スマブラ小説トップに戻る

トップページに戻る