極ありきたりな小さな町であるファングを有名たらしめているのは、領主のサカムビット公の発案した「迷宮探検競技」にある。毎月5月1日に開催されるこの競技には、生還がほとんど望み薄であるにもかかわらず毎年多くの挑戦者が挑んでいる。その理由は莫大な商品にある。この競技の勝者には、金貨10000枚とチアンマイの永久統治権が与えられるのだ。

とはいえ、チャンピオンになることは容易ではない。彼の築いた大迷宮にはありとあらゆる邪悪な罠や生物で満たされ、内部は危険で満ちているのだ。迷宮を作り上げたサカムビット公はある日自身の部下、しかも選りすぐりの腕利きである10名を迷宮内に送り込んだ。彼らは二度と帰ってこなかった。このうわさはたちまち周辺に広がり、サカムビット公は迷宮探検競技の開催を宣言した。何年かたつ内にこの競技はファングの名物となり、毎年5月1日の数ヶ月前から準備が整えられるようになった。

君がこの地下迷宮に挑むのは、決して黄金につられたからではない。いまだかつてこの地下迷宮から意気揚々と帰還した者が誰もいないという事実が、君の血を滾らせるのだ。君は最後に外気を思いっきり吸って、死のワナの地価迷宮へと足を踏み入れる……

本作品の主人公の目的はサカムビット公が発案した「死のワナの地下迷宮」を見事突破し、多大なる名誉と金貨1万枚を得ることにあります。死のワナの地下迷宮に挑む挑戦者は主人公だけではありません。道中では妖精めいた女にたくましい蛮人、果ては東洋の忍者まで、バライティーに飛んだ挑戦者たちと出会い、時には戦い、時には一時的に協力することになります。特に一時的に協力関係を結ぶ蛮人スロムの最期はなかなかに凄惨です。

作品としての難易度は非常に高いです。今まで誰も攻略したことがない迷宮という設定上当たり前かもしれませんが、即死級のワナがあちらこちらに存在しています。粗雑な振る舞いは死の元です。あまり余計なことに首を突っ込みすぎると、不本意な最後を遂げることになるでしょう。だからと言って危険を避け続けて行くとそれはそれで詰むので、このあたりのさじ加減は難しいところです。また、やたらと強力な敵も多いので、できることならば技術点は11はほしいところです。7や8でもしこの迷宮探検競技を制することができたら、それはそれですごいですが。

挿絵の1つ。

ちなみに、迷宮短剣競技から脱落すると、競技監督から死刑になるか、それとも残りの一生をこの迷宮の中で暮らすかという選択を迫られます。実際、競技中に過去に挑戦に失敗した元冒険者と思われる男とすれ違うこともあります。彼の身なりを見る限りでは、死刑を選ぶのも「有り」かなと思います。おそらくこうした処置が為されているのは、敗者を生きたまま外に出すと、他の挑戦者たちに迷宮の秘密が漏れてしまうとサカムビット公が配慮しているためだと推測できますが、競技監督や後述する毒のアイビーもやはりずーっとここにい続けるのでしょうか。もしかしたら競技監督たちも、もともとは挑戦者の一人だったりするのかも知れません。

また、この作品には盗賊都市で登場したいけ好かない2組のトロール、サワベリーとファットノーズのうちサワベリーの姉である毒のアイビーが登場します。彼女は大変弟思いのようで、初対面であるにもかかわらず主人公に対して弟の自慢話をとうとうと聞かせてきます。特に彼女の話は有益なものではないので、興味がなければ聞き飛ばしてもいいでしょう。

一つ疑問に思ったのですが、この迷宮短剣競技はもともとファングの町おこしのために行われるようになったようなのですが、本当にこんなもので町が活気付いたりするのでしょうか。挑戦者たちが困難にぶつかったり敵と戦ったりしているシーンは、観戦者には見えないわけで……挑戦者が迷宮に入っていくのを見送り、あとはひたすら誰かが出てくるのを待つ、というのは非常に退屈なものだと思うのですが、どうなんでしょうかね。中継用のカメラが迷宮内に仕掛けられているというのならまだ話は分かりますが、あの世界にそんな文明があるとは思えないですし……

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