サソリ沼の迷路

君は少しくらいの危険など物ともしない勇敢な冒険家だが、何の策も無くサソリ沼に踏み込むような愚か者ではない。君はこれまで懸命にも、サソリ沼に踏み込むことを避け続けてきた。

サソリ沼から生きて帰還するのが難しい理由はごく簡単だ。サソリ沼は無数の曲がりくねった小路が縦横無尽に行き交っており、さらに常に不気味な霧が空を覆っているため、星による位置の確認ができないのだ。ひとたび沼地の奥に入り込めば、コンパスさえも正しい方向を示すことは無い。何の策もなく沼地に足を踏み入れれば、君はさんざん堂々巡りを繰り返した挙句、沼地のどこかで倒れてしまうだろう。

ある日、君は親切にも街道でぐったりしていた老婆を助ける。老婆は水を飲ませると元気を取り戻したが、君は念のために次の町まで老婆を送る。君が町の市場で老婆に別れを告げると、老婆はお礼にと真鍮の指輪を差し出す。君は笑顔でそれを受け取る。指輪は一見平凡なものだが、旅を続けるにつれて君はこの指輪に魔力があることに気づく。この指輪をはめている限り、きみは北がどちらかを理解することができるのだ。たとえ深い森にいようと、辺りを霧が包んでいようと、君は決して道に迷うことが無い。さらにこの指輪には、邪悪なものが近づくと熱を発して警告するという力も持っている。この指輪は君のような冒険者にとって、とてつもない価値を持っている!

もはやサソリ沼に踏み込むのをためらう理由は無い。君は魔法の指輪とともに、栄光と財宝を求めてサソリ沼目指して旅を始める…

ゲームスタート時には主人公はまだ明確な目的というものを持っていません。栄光と財宝を目指す、というおぼろげな野望を抱いているのみです。しかし、サソリ沼は野望と魔法の指輪と剣術だけで生きていけるような場所ではありません。サソリ沼近辺で自分が仕えるべき主人を探し、魔法を身につけてから挑まないと、手痛い傷を追う羽目になるでしょう。

主人公が依頼を受けることができる相手は3人。善に属する魔法使いのセレイターか、謎めいた中立の商人プームチャッカーか、悪の魔法使いグリムズレイド。誰に仕えるかによって、サソリ沼で果たすべき目的も変わってきます。

依頼を受ける相手からは魔法を使えるようになる宝石を受け取ることができます。もらえる魔法の数はセレイターとグリムズレイドに使える場合は6つ、プームチャッカーの場合は5つ。プームチャッカーは「そんなにたくさんはいらないはずだが、わしは気前がいいんでね」などといっていますが、彼が一番ケチだったりします。さすがは商人。

 
中立の商人プームチャッカー

魔法は「善」の魔法、「中立」の魔法、「悪」の魔法の3つに分類されています。セレイターからは「善」および「中立」の魔法を、プームチャッカーからは「中立」の魔法のみを、グリムズレイドからは「悪」および「中立」の魔法を授かることができます。

セレイターの依頼はおそらく難易度的には3人の中で一番簡単です。悪人を見破る指輪の能力に従い、悪人には即斬りかかり、そうでない相手とはしっかりと話し合いをする、というスタンスでいけば、使命を果たすことはそれほど難しくはありません。とはいえ判断を誤ればあっさり死ぬこともあるので、注意が必要ですが。

プームチャッカーの依頼は難易度がやや高めです。最初は中立の魔法しか選べない上、魔法の数も少なく、またサソリ沼内の「善」に属するあるじからも、「悪」に属するあるじからも積極的な援助が受けられないため、独力で道を切り開かねばなりません。

グリムズレイドの依頼はおそらく最も難易度が高いです。まず、グリムズレイドから依頼を受けること自体が難しく、また依頼の性質上戦闘の機会も増えるため、体力点・技術点が相当高くないと使命を果たすことはできないでしょう。

ゲームシステムについても説明しますと、本作品は双方向型、つまり一度言った場所に再び戻ってくることができるタイプのゲームブックです。また、読者への配慮かサソリ沼内の空き地には番号が振られており、マッピングしやすいつくりになっています。それが逆に臨場感を壊しているような気もしますが。

また、サソリ沼は作品内ではいまだに地図が作られていないような未開の地であると設定されているにもかかわらず、内部には普通に盗賊がいたり、巨人が生活したりしています。また、マッピングをしているとサソリ沼自体それほど大きな場所に感じられない上、またセレイターに仕えていればいろいろなあるじからの援助や助言ももらえるため、あまり恐ろしさが感じられません。個人的にはもっとおどろおどろしい描写があればよかったと思うのですが。

もちろんいい点もあります。3人の依頼主はそれぞれ違った方向に魅力がありますし、誰に仕えているかで反応を変えるサソリ沼内部の人間たちは見ていて面白いです。善の勢力であるにもかかわらず、「クモのあるじに出会ったら即座に殺しておしまいなさい」という過激な思想の持ち主の鳥の女あるじは特に印象的です。所詮善と悪が相互を理解することなどない、と彼女は言いたいのでしょうか?

 
殺してしまえといわれたクモのあるじ。なかなか威厳がある。

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