地獄の館

降りしきる雨の中、明日の約束を果たすために夜道を車で飛ばしていた君は、突然飛び出てきた人影に驚く。慌ててハンドルを切るが、そのせいで道路の溝にはまってしまう!慌てて車を降りるが、人影はどこかに消えていた。おまけに今の衝撃で車が故障し、溝から脱出出来なくなってしまった。完全な立ち往生だ。

全くついていないが、しかし天は君を見離してはいなかった。偶然にも近くに洋館があったのだ。この家の主人に頼み込めば、電話ぐらいは貸してもらえるだろう。主人が気前のいい人物ならば、一晩を過ごす部屋を貸してくれるかもしれない。君は暴風雨にさらされながら、洋館へと近づいていく。この館が暴風雨などとは比べ物にならない恐怖が渦巻く「地獄の館」であることも知らずに……

ファイティングファンタジーシリーズ10作目にして初の現代ホラー、「地獄の館」。非常に秀逸かつ、大きな問題点をはらんだ作品です。主人公はこれまでの作品と違い一般人です。冒険者ではないので武器も持っておらず、また最初のうちは危険にさらされるとは露ほども思っていないため、危険に対する心構えも持っていません。

特に武器がないのは痛く、何か身を守るものを見つけられない限りは、戦闘中は技術点を-3しなければなりません。仮に原技術点が10点なら戦闘時の技術点は7点となります。

とはいえ幸い、この屋敷の中にはそこまでバカ強い生き物はいません。というか、戦闘で切り抜けられる局面が極端に少ないです。ファンタジー世界のようにオークやゴブリンやトロールがバンバン襲い掛かってくることはなく、頭脳と直感で場を切り抜けることが求められます。

とはいえ作品の難易度はかなり高いです。地獄の館を高難易度足らしめている要因は主に二つ。恐怖点ルールとフラグの立て方の難しさです。

恐怖点はこの作品でのみ採用されている独自ルールです。ゲーム開始時の恐怖点は0で、館の中で危険な目に合うと増えていきます。数値がゲーム開始時に決めた「さいころを一つ振った数値に6を足したもの(つまり7〜12)」に達するとその時点で主人公は発狂しゲームオーバーとなります。

冒険の舞台は館という閉じられた空間ですが、館の中は思った以上に広大で、たくさんの部屋があります。危険しかない、入る意味のない部屋もたくさんあるのですが、その部屋が安全か危険かのヒントはほとんどないので最初のうちはしらみつぶしに入りまくって、死にながら危険な部屋を覚えていくしかありません。巻末に2階の地図が乗っているので、参考にしましょう。(1階と地下の地図はありませんが、自分で作ることが可能です。FFシリーズにしては珍しくわりと正確な地図が出来ます)。

フラグの立て方も非常に難解です。この作品では真のラスボスを倒すためにはあるアイテムが必要なのですが、そのアイテムを手に入れるにはある合言葉を知っていなければなりません。しかしその合言葉を知るためには複数の人物から話を聞いたうえで、さらに感も働かせなければなりません、というか翻訳の問題なのか、合言葉が非常にわかりにくいです。複数の人物に合うための経路も限られており、一つ選択肢を間違えば即デッドエンドブロックに入ります。いやらしいことにデッドエンドブロックがまたよくできているので、読者はどこで自分が選択を誤ったのかなかなか気が付けません。この作品を3回以内の挑戦で解けた人は全ゲームブックファンに自慢してもいいでしょう。

挿絵の一つ。一見物腰柔らかな主人だが……



登場人物は本来的でありながら暴力に弱く懐柔もたやすいシーコウ、死んで居るはずなのに会話ができるモルダナ、さらには絵画の若い女性など妙な人間ばかりです。基本的に味方になってくれそうなは少ないですが、だからといって下手に相手に突っかかるとその後重要なヒントが聞き出せなくなることもあるので注意しましょう。

何はともあれ高難易度乍ら完成度は高い逸品です。あまりにも難しすぎるのが難点ですが、完成されたルート構成は感動すら覚えます。

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